【インタビュー】十人十色の手しごと職人たちが込める想い

Interview07 “津軽びいどろといえば、100以上ある色。色は無限にあるから、「誰かの心に残る色」をつくっていきたい” Interview07 “津軽びいどろといえば、100以上ある色。色は無限にあるから、「誰かの心に残る色」をつくっていきたい”

中川 洋之
中川 洋之 津軽びいどろで扱う製品すべての色づくり・溶融を一手に担う、北洋硝子の工場長。その高い技術が評価され、2012年には「あおもりマイスター」に認定される。ガラス職人として30年以上を歩み、ガラスの色づくりに関して豊富な経験や実績をもつ。現在は後進の育成にも尽力。

日本の豊かな四季の情景を、ガラスに映しこむ色彩の豊かさ。津軽びいどろ最大の魅力は、扱う色の多さにあります。ガラスの色は成分の配合によって変化しますが、これまで津軽びいどろは100を超える色のレシピを独自で開発してきました。
また、ガラスの色はとても繊細で、1kgに対してたった0.1g、僅かな配合の違いが発色や完成度を左右します。また、金型を使わずガラスを吹くのか・それとも金型を使用するのか…などによって色のニュアンスが異なってしまうこともあります。そのため、成型技法や表現したいデザインによって、同じように見える色であっても“実は配合が異なる色”というレシピもたくさん開発してきました。独自でこんなに多彩な色を生み出せる工房は、世界でも類を見ないかもしれません。

津軽びいどろが独自に色ガラスをつくりはじめた理由のひとつは、青森という土地にあります。交通の便があまりよくなく、冬には雪で道が閉ざされてしまう青森では、色ガラスをつくるための原料も自社で調合して補う必要があったからです。そこで、色づくりという新しい技術開発の役目を担ったのが、現在の工場長である中川でした。

それまで色づくりを学んだことのなかった中川は、手探りで試行錯誤し、数年を掛けてひとつ、またひとつと色を開発してきました。その成果として、30年経つ今では、目標とする色を見れば大まかな配合が思い描け、1-2回の調整でぴたっと色が決まる、唯一無二の職人に。色ガラスの中では比較的難しいとされる「赤」の色合いも複数開発しています。

色づくりには配合の他にもうひとつ欠かせない要素があります。それは、ガラスを溶かして成形できる状態にする「溶解」です。炉の温度や原料投入のタイミング次第では発色が揺らいでしまうため、溶解には細心の注意を払います。
また、成形する職人とガラスの硬さや吹き心地を相談しながら、良い色を効率よく出せる加減を見極めることも溶解チームの仕事となります。ときには数年を掛けて完成させる色もあり、根気と情熱がなければ続けていけない仕事です。

そんな中川の技術は現在、チームとして後進へと受け継がれている最中です。はじめは色の名前を覚えるだけでも大仕事でしたが、最近では基本的な配合は彼らの仕事となりました。若手の職人は思いも寄らない発想で、新しい刺激もくれるのだそうです。「色づくりは手間がかかるけれど、誰かの心に残る色をつくりたい。そういう想いで生まれた北洋硝子の色づくりを、次の世代が繫いでくれるのは、やっぱり嬉しいよね」。そう語る中川の想いが、これからも津軽びいどろを彩っていきます。

【 溶融 】

技法 宙溶融

【 溶融 】

ひと匙の配合が変える、色とカタチの美しさ
熟練した感覚でガラスの色を調合する技術
ガラスの主原料であるケイ素にさまざまな原料を配合して、自在に「色」を創り出す技術。温度によっても色や性質が変わるため、1年を通じてガラスを溶かす炉の管理も担う。すべての作品の土台となるため、職人やデザイナーと連携しながら日々調整を重ねています。

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