【インタビュー】十人十色の手しごと職人たちが込める想い
- 青森県伝統工芸士 篠原 義和 1969年津軽びいどろの故郷・青森市に生まれ、1996年入社。型を使わずにガラスを造形する「オーナメント」を得意としている。シンプルな作風ながら、見る人や見る角度によってさまざまに表情を変える個性豊かな作品が多い。2012年には、青森県伝統工芸士に認定された。
いつも夏になると開催される、北洋硝子の硝子市。篠原は祖母と一緒に、毎年足を運んでいたといいます。そうしてさまざまなガラスを間近に見るなかで、祖母との思い出でもある青森の工芸品は、生涯を注ぐものとなってゆきました。「自分にしかつくれないオーナメントをつくろう」と思ったのは、ひと通りの造形ができるようになった頃。ガラスづくりを始めたばかりの頃は仕事として要求されるものをしっかりとつくることが目標だったけれど、あるときふと、そこに自分の意志を入れたくなったのだそうです。
篠原が手掛ける『ふくろう』は『津軽びいどろ』の看板製品のひとつ。シンプルに表現されたフォルムに独特の愛嬌があり、還暦祝いや退職祝い、銀金婚式、引越祝いなどにも人気です。棹に巻き取った赤々としたガラスを、型を一切使わずに仕上げた滑らかな造形には、篠原にしか表現できない心や魂のようなものが宿るようです。
「ガラスづくりで難しいのは匙加減ひとつで変わってしまうところ。僕のオーナメントは型を使わないものなので、ほんのちょっとした瞬間にガラスが意志をもつというか・・・『ふくろう』になるんです。なんていうのかな、ほんの一瞬で自分の意志とは違うところにいってしまうのが難しさであり、楽しさだと思います」。
『ふくろう』に意志をもたせるうえで篠原が大切にしているのは、ガラスにどんな“想い”を込めるか。たとえば同じカタチをつくることは他の誰かにもできるかもしれません。でも、ガラスを通じて伝えたい想いがあるからこそ、篠原の『ふくろう』は誰かの心に寄り添えるのではないでしょうか。「お客さんの手に渡って、使っていただくことを想像するのが喜びです」。誰の元に届いて、どこに置かれて、どんな時間に、誰の目に映るものになるのか?想像しながらつくりあげた存在が「篠原さんらしい『ふくろう』だね」と言われるたびに、やりがいを感じるのだと言います。「窓辺にフクロウが飾ってあるのを見つけたり、喫茶店、旅先のデパートのディスプレイとか、遠くで自分の作品に出会えたときは本当に嬉しい。自分の思っていたことが伝わっているんだなって」。
『津軽びいどろ』は伝統工芸品ということもあってか、何に使ったらいいですか?と聞かれることがよくあります。「オーナメントはとくにそうだけれど、器ももっと自由に使ってほしいと思います。モノ自体ではなくて、そこに付随する時間を愉しめるような」。花器なら、単に花を飾るだけじゃもったいない、というのが篠原の考えです。たとえば夫が妻へ花器をプレゼントするとしたら、ずっとそうやって一緒に花を飾っていこう、という意味を込めることができます。次のアニバーサリーには何の花を飾ろうか・・・という日々の幸せにも繋がります。オーナメントも、お皿やグラスも同じです。買う・贈る時だけではなく、これからの思い出をつくるためのアイテムとして『津軽びいどろ』を選んで頂ければ、これほど職人冥利に尽きることはありません。
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