【インタビュー】十人十色の手しごと職人たちが込める想い
- 福士 祐介 造園業や内装業など、さまざまな“つくる”仕事を経てガラス職人へ。職人歴は10年以上。思い入れのある製品は、地元での思い出や風情を写し込んだ「津軽びいどろNEBUTA」で、なかでも大鉢の見応えや、完成した時の達成感はひとしお。
“つくる”という手仕事への憧れからガラス職人となった福士は、金型にガラスを流し込む「圧迫成形」や、金型を回した遠心力でガラスを形づくる「スピン成形」に特化した職人のひとり。手仕事ならではのぬくもりや風合いを活かしつつも、生産量を増やすことができるその成形技術は、昔ながらの伝統を受け継ぐに留まっていた北洋硝子の大きな転換点となって、現在の生産ラインを支えています。ひとつの工房でありながら、津軽びいどろがこれほどたくさんの製品を安定してお届けできるのは、圧迫成形とスピン成形の新技術あってこそだといえます。
圧迫成形やスピン成形での生産を軌道に乗せたのは、当時の若手職人たちでした。その中心となっていたのが福士です。もともとは型を使わずに成形する「宙吹き」に特化した北洋硝子であったものの、型を使うからといってガラスづくりが簡単になることありません。圧迫には圧迫の、スピンにはスピンの特別な技術が必要となり、その品質が安定するまでにはたくさんの試行錯誤がありました。融けたガラスを型に入れるタイミング、成形するスピード、温度管理…。各工程に分かれての作業も多く、職人同士の阿吽の連携も不可欠です。前行程と次行程のひと呼吸ぶんのズレで、すべてが台無しになってしまうこともありました。福士や若手職人たちはそれら一つひとつを調整し、失敗の原因を分析し、技術を研鑽して、いまの品質を創りあげていきました。
「品質は日本一だ!と自分では思っています。目標は、オートメーションに勝つことです」と話す福士のガラスは、厚みにばらつきがなく、皿もタンブラーの飲み口も水平で美しいかたちをしています。まさにオートメーションでつくられたかのようにサイズや見た目が均一で、それでいて手仕事のぬくもりはしっかりと宿っている絶妙なバランス感覚は、福士ならではのものです。
たとえば、福士が主に手掛ける「津軽びいどろNEBUTA」は人気ラインのひとつで生産量が多いものの、規格不良などで返品されることはほとんどありません。陶器やガラスといった手仕事の製品にしては異例なことだと、納品先からの信頼もひときわ厚いのです。店舗側でのチェックは必要ないくらいだね、と言っていただけたこともありました。返品の際にかかる手間や、品質の整っていないものがお客様の手元に届くリスクに“責任をもつ”ことも、職人として大切な仕事。つくった先のことまで考えながら、一つひとつの作業に気を抜くことはないのだといいます。
「ガラスづくりは難しい。技術が身につくたびに改善点にも気づくようになる。難しいけれど、それがやりがいでもあります」
オートメーションでは狂いのない規格品がつくれるけれど、津軽びいどろのように多彩な色使いや、繊細な模様を入れることはできません。精密さを追求しながら、手仕事の美しさを活かしながら、福士は理想のガラスをめざしつづけています。
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- Interview 006横山 俊彦
- 新しい技法の確立と、伝統技術「宙吹き」の継承。妥協のない品質と、自分の理想のカタチを追求します
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- Interview 005福士 祐介
- 「手仕事のゆらぎ」を言い訳にはしない美しく、色彩豊かで、規格の整った品質にこだわりたい
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- Interview 004神 正人
- 先達の技術と伝統を受け継げるように試行錯誤しながら美しいガラスをつくっていきたい
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- Interview 003館山美沙×牧野清子
- もっと気軽に、いつも使うアイテムとしてガラスに愛着をもってもらえたら、ほんとうに嬉しい。
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- Interview 002篠原 義和
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- 青森は自然が本当に豊か。その美しさを、少しでもガラスから感じてもらえれば。