【インタビュー】十人十色の手しごと職人たちが込める想い

Interview03 もっと気軽に、いつも使うアイテムとしてガラスに愛着をもってもらえたら、ほんとうに嬉しい ” Interview03 もっと気軽に、いつも使うアイテムとしてガラスに愛着をもってもらえたら、ほんとうに嬉しい

舘山 美沙
舘山 美沙 小さい頃に出会った、小さな花が入ったガラスのペーパーウェイトが忘れられず、好きなことを仕事に。私生活では二児の母。

牧野 清子
牧野 清子 前職は服飾の販売業。ある日ガラス会社に勤める同級生と偶然再会し、楽しそうに働く姿に惹かれてガラス職人の道へ。私生活では一児の母。

「昔ながらの伝統技法を守るガラス工房」というと、どことなく厳しい・険しいようなイメージですが、津軽びいどろをつくる北洋硝子は、それとはすこし違った雰囲気があります。それぞれがガラスづくりにひたむきで、広い工房ではガラスづくりの音しか聞こえません。でも、ひとたび炉を離れると、職人たちの間にあるのは親しみやすさばかりです。若い職人や女性の職人も多く、ガラスに込めたそれぞれの感性を自由に話し合える環境は、多彩なアイテム展開の土台にもなっています。創業時は“見て覚える”“黙して語らず”という気風もあったようですが、いまでは世代や性別をこえて、それぞれに学びあえる関係が育まれています。

そんな雰囲気をつくりあげた立役者ともいえるのが、ベテラン女性職人の舘山と牧野です。ふたりは同期で入社して以来、お互いに家庭や子どもを持ちながらも、共にガラスづくりの技術を磨いてきました。主に担当しているのは、ピンブローによる一輪挿しやオイルランプ、箸置きの作製です。「ガラスづくりのどこが好きか、いまでもよくわからない」と言いながらも、「でも、ガラスしか夢中になれるものがなかった」と語るふたりは、やっぱりどこか似たもの同士。炉の前では真摯な眼差しで淀みなく仕上げていく、まさに職人といった姿ですが、ふたりでの会話がはじまると愛嬌のある素顔がのぞきます。

〈舘山×牧野〉ふたりのびいどろ

同期入社で同じ商品をつくっているけれど、作風は真逆のふたり。
全く違った魅力を持つそれぞれのガラスづくりについてインタビューしました。

お互いの紹介をお願いします。

牧野
舘山はキチッと同じものをずっとつくり続けることができる、まさに職人という感じです。私たちはオイルランプや箸置き、一輪挿しをメインにつくっていて、嬉しいことに年々、生産量は増えているんです。スピードを求められても品質を落とさずに同じものがつくれるというのは、本当にすごいことだと思います。
舘山
牧野のつくるものは、ほかの人にはマネできない佇まいというか、魅力があります。色合いもそうだし、カタチやフォルムもどこか印象的で、ただの丸や四角は誰にだってつくれますけど、そうじゃないんです。職人としてダメかもって彼女は言いますが、ほかの誰にもつくれない魅力なので、居てくれなきゃ困ります。

津軽びいどろの魅力はどこだと思いますか。

舘山
やっぱり色がたくさんあることです。ほかにない色の合わせ方ができるので、色づかいにも個性が出ます。たとえば私は粒が大きめのポップな感じが好きだけど、牧野は暗めの色が好きだよね?
牧野
暗めの色が好きです。舘山のは「ちょっといまの時代にはやい」って言われるような斬新さがあります(笑)。でも確かに、数年経つと似たデザインの商品が人気になっているからすごい!
舘山
そうでしょ?(笑)
牧野
あとは窯の大きさも魅力だと思います。大きい分、つくれるカタチや大きさの種類が幅広いんです。オイルランプのまん丸も、ほかではできないと聞きました。
舘山
オイルランプといえば、震災の時にロウソクはすぐに倒れちゃったけど、オイルランプは使いやすいと評判でした。持続性があるし、見た目も可愛いし、アロマでリラックスもできる。そういうときに役立てるというのも嬉しいですね。

人気商品の「彩手鞠」や「オイルランプ」は、そのほとんどが舘山と牧野によるものです。好みも作風も真逆のふたりが同じ製品をつくっていることで、津軽びいどろの魅力は深みを増しているように感じます。一見同じように見えても、模様の入り方やバランスに、それぞれの作風が反映されています。それがあるからこそ、ハンドメイドならではの“選ぶ楽しみ”が生まれているのです。ピンブローの製品や箸置きは小振りなものが多く、手先の繊細な作業が欠かせません。その細やかな作業には、やはり女性ならではの感性が光ります。
いまでは舘山と牧野のほかにも若い女性職人が増えてきました。「これからは若手を育てながらも、自分たちらしいガラスをつくっていきたい」と笑うふたりは「愛着がわくように」を共通テーマに、ものづくりをしています。 「たくさんのガラスの中から毎日使いたくなるものを見つけて、もっとガラスを好きになっていただけたら嬉しいです」

【 ピンブロー 】

【 ピンブロー 】

水蒸気で膨らませ、ガラス製品を美しく仕上げる技法
ガラス玉にピンで穴を空け、水で濡らした新聞紙を差し入れて水蒸気で膨らませる技法です。ピンを入れる中心の取り方と、水蒸気で膨らませる速度の調節には職人それぞれのコツがあり、緻密で繊細な調整が求められます。なめらかな質感が特長で、小振りな製品も美しく仕上がります。

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