【インタビュー】十人十色の手しごと職人たちが込める想い
- 青森県伝統工芸士 芳賀 清二 1980年入社。ガラス展に幾度となく作品を出品し、東北ガラスアート展やあおもりクラフトコンペ、日本民芸公募展などで数々の賞を受賞。2007年には、青森県伝統工芸士に認定された。現在は、さらに自らの技術を磨きつつ若手の育成にも取り組んでいる。
「春のガラス」ときいて、どんなものを想像しますか?四季によって移り変わる自然の景色は、いつでもたくさんの色で溢れています。
たとえばひとつの桜でも、それが水辺にあるのか山にあるのか。ぼんやりと霞む朝か、あるいは夕暮れ、夜桜かによって、色の感じ方は変わってゆきます。
青森県伝統工芸士である芳賀は、そうした自然の美しさをなにより愛している職人です。芳賀が見た景色はガラスに写しとられて、津軽びいどろになってゆきます。
芳賀がガラス職人を選んだのは、「ガラスがきれいだったから」。
若い頃に出会ったキラキラとした輝きがきっかけで、そこからずっと、ガラスと向き合う日々が続いています。津軽びいどろはたくさんの色があるから、
試したいことも、その分たくさんあるのだそうです。
芳賀が伝統工芸士となったのは、「宙吹き」という技法の技術が県に認められたからです。これは型や機械を使わずに、棹をまわしながらガラスを吹く技法で、 修得には長年の経験が不可欠です。吹く加減と回すスピード、その微妙な加減でさまざまなカタチを造ることができます。器の形状やデザインによっては、 ほかの職人と息を合わせてひとつの作品を完成させることも。あっというまにカタチになってゆくガラスは、まるで魔法を見ているかのようで、 積み重ねた時間がそこから伝わってきます。 宙吹きを学ぶ若手にとって、芳賀の技術は憧れの対象。でも誰より長く炉の前にいるのも芳賀なので、「いつまでたっても追いつける気がしない」のだとか。 もっと良いガラスを創りたいと、いまでも毎日のように芳賀は試行錯誤を繰り返しています。
完成した器や花器には模様やカタチに微妙な変化はありますが、サイズには誤差がほとんどありません。手仕事なのに、驚くほど整った品質。
その秘訣は「ガラスが動きたい方向へ導いてあげること」なのだといいます。1200度にもなる溶けたガラスは熱く、見た目以上に重量があるものですが、
扱いが難しい竿を身体の一部のように操りながら、芳賀はガラスを“あるべき姿”にしてゆきます。津軽びいどろの作品はそのどれもが四季に由来する名前をもっていて、
竿から離れた瞬間に、ただのガラスが名前のあるものへと変わっていくのです。
「青森は本当に自然が豊か。その美しさを、少しでもガラスから感じてもらえれば」
たくさんの美しい情景を、ガラスを通じて伝えていきたい。それが芳賀と津軽びいどろの想いです。
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- Interview 006横山 俊彦
- 新しい技法の確立と、伝統技術「宙吹き」の継承。妥協のない品質と、自分の理想のカタチを追求します
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- Interview 005福士 祐介
- 「手仕事のゆらぎ」を言い訳にはしない美しく、色彩豊かで、規格の整った品質にこだわりたい
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- Interview 004神 正人
- 先達の技術と伝統を受け継げるように試行錯誤しながら美しいガラスをつくっていきたい
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- Interview 003館山美沙×牧野清子
- もっと気軽に、いつも使うアイテムとしてガラスに愛着をもってもらえたら、ほんとうに嬉しい。
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- Interview 002篠原 義和
- 『津軽びいどろ』があることで日々の楽しみや、思い出づくりのきっかけをつくれたら
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- Interview 001芳賀 清二
- 青森は自然が本当に豊か。その美しさを、少しでもガラスから感じてもらえれば。