【インタビュー】十人十色の手しごと職人たちが込める想い
- 神 正人 1991年入社。“宙吹き”の技術を受け継ごうと日々研鑽するかたわら、『津軽びいどろ』の色彩を活かした個人作品の制作にも取り組んでいる。2018年には、青森県伝統工芸士に認定された。
15歳からガラスの道へと進み、以来ひたむきに技術を磨き続けた神は『津軽びいどろ』の次代を担う職人です。彼とガラスとの出会いは就職先として紹介された『津軽びいどろ』をつくる北洋硝子からでした。はじめはなんとなく、だった気持ちが一転したのは、大小さまざまな炉が燃える工房に足を踏み入れたとき。それまでは単調な印象だった職人という仕事が「生き生きと楽しそうに感じられた」ことが、ガラスへの探求心に繋がっていったといいます。「ガラスをつくっていていちばん嬉しいのは、器が思い通りにつくれたときかな」。
一点ものの作品とは違い、型を使わない宙吹きでつくり上げる津軽びいどろのガラス制作は、常に厚みや大きさを等しく、そして美しく揃える技術が必要です。そして、商品をただつくり上げることだけではなく、「津軽びいどろ」の魅力である”色の美しさ“や “温かみ”を使い手に伝わる商品に仕上げられる技術は、時間をかけたからといって修得できる訳ではありません。
溶けて流動するガラスを正確に“導く”独自のカンの良さもまた、彼の持ち味である几帳面さが成せる技です。職人として25年以上も重ねてきた日々のなかで、いまの緻密な技術が培われていきました。彼自身は自分の長所を「試行錯誤を楽しめる心」だといいます。「失敗を恐れずに、理想をめざして何度も繰り返す時間を楽しめたからこそ、厳しい職人の世界でも技を磨いていけたんじゃないかな」。
そんな神がいま取り組んでいるのは、伝統工芸である“宙吹き”の中でも特に大ぶりな商品の制作です。これまでも宙吹きの職人として食器などをつくっていましたが、これからは目標とする伝統工芸士の芳賀や、先達のガラスづくりの全てを受け継いでいく予定です。
ガラスの層を幾重にも重ねた大ぶりな花器や豪華なインテリアなどは、使うガラス量も多くその分重くなりますが、宙吹きの難しさは商品の大きさ・色数の多さでも大きく変わります。
ガラスが重いと、棹の取り回しひとつとっても思うようにいきません。「先達の背中を遠く感じるけれど、それこそ試行錯誤を重ねながら、なんとしてもやらなければ」と技術を伝承する重みを感じながらも、職人人生の目標となっているようです。
もともとは偶然出会った仕事。でもいまは、生涯続けていきたいと思える道。職人になってからふと見返した卒業アルバムには、彼自身すっかり忘れていた将来の夢が書かれていたといいます。
「職人になりたい」
その夢は叶って、これからもずっと続いていきます。
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- Interview 006横山 俊彦
- 新しい技法の確立と、伝統技術「宙吹き」の継承。妥協のない品質と、自分の理想のカタチを追求します
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- Interview 005福士 祐介
- 「手仕事のゆらぎ」を言い訳にはしない美しく、色彩豊かで、規格の整った品質にこだわりたい
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- Interview 004神 正人
- 先達の技術と伝統を受け継げるように試行錯誤しながら美しいガラスをつくっていきたい
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- Interview 003館山美沙×牧野清子
- もっと気軽に、いつも使うアイテムとしてガラスに愛着をもってもらえたら、ほんとうに嬉しい。
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- Interview 002篠原 義和
- 『津軽びいどろ』があることで日々の楽しみや、思い出づくりのきっかけをつくれたら
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- Interview 001芳賀 清二
- 青森は自然が本当に豊か。その美しさを、少しでもガラスから感じてもらえれば。