【読みもの】百色の青森 津軽びいどろを訪ねて

  • 百色の青森 kimori
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青森をつくる もの ひと こと

『津軽びいどろ』の生まれた青森県の多彩な「いろ」と「ひと」と「もの」を訪ねて取材、土地の魅力を発信していくコンテンツです。今回は青森を代表する果物「りんご」を原料につくられるシードルについてご紹介します。

青森をつくるもの

弘前の風景を紡ぐシードル 弘前の風景を紡ぐシードル

りんご農家が本当につくりたかったシードル
『kimori』

日本で収穫されるりんごの約6割を生産している青森。なかでもとくにりんごとの関わりが深いのが、“日本りんごのふるさと”弘前です。ほんの少し街中を離れると道路の両脇にはりんご畑が広がっていて、街中であっても、所々にりんごの木を見つけることができる弘前。今回は、そんなりんご畑の真ん中に建つシードル工場『kimori』についてご紹介します。

公園のなかの白い三角

人のチカラだけでは
おいしいお酒はつくれない。
だからりんごの神様へむけた
神棚がわりの白一色。
おいしい空気と水にも感謝。

弘前シードル工房 kimori
http://kimori-shop.com
弘前市りんご公園内、りんご畑の中にある醸造所。ここでは、若いりんご農家たちが自ら育て、
ひとつひとつ手作業で収穫したりんごを持ち寄ってシードルを造っています。

青森のりんごと、青森の酵母。
青森でしかつくれない味。

弘前市りんご公園のなかに佇む、白い三角屋根が特長の「弘前シードル工房kimori」。収穫体験ができるりんごの木々に包まれて建つこの建物では、青森のりんごを使ったシードルが生産されています。シードルとは、りんごを醗酵させてつくるスパークリングワインのことです。近年は青森のりんごジュースやりんごシードルへの注目が高く、そのおいしさは海外でも大人気。なかでも弘前のりんご農家が集まってつくる「kimoriシードル」は、農家だからこそ引き出せる、りんご本来の味わいが楽しめると話題です。濾過をしていない、ぬくもりある味わいと果実感は、いっそ“農作物”といえるのかも知れません。

りんごを醗酵させる酵母も、白神山地で発見された「白神酵母」を使うなど、原材料は100%青森県産です。ブナの葉の裏から採取された白神酵母は寒さに強く、りんごは低温でじっくり醗酵させるため、舌触りの優しい自然な炭酸が果汁に溶け込むのだとか。基本の商品はドライとスイートがあり、ドライはガレットなどの食事に、スイートは食前酒やスイーツにあう味わいとなっています。結婚式やパーティなどでは、シャンパンの代わりにりんごのシードルを用意したい、という方も増えているようです。

「暮らしの一部」。弘前で実を結んだ
青森のりんご栽培。

どうして農家が「kimoriシードル」をつくるようになったのか。その理由には、青森のりんごと、りんごのある風景を守りたいという想いが込められています。


1875年の青森で試験的にはじまった日本初のりんご栽培は、1877年に弘前で実を結び、以降弘前ではりんご栽培の先進的な取り組みが行われてきました。今では「弘前といえばりんご畑」というほど、日常の光景の中にりんごの木があることが当たり前となっています。ところが近年は農家の高齢化が進み、見渡す限りのりんご畑が、少しずつ減ってきているのです。人手の足りない畑は、放置していると倒木や虫などの被害がでて周りの畑に迷惑がかかるため、更地にしてしまうのが農家ルール。このままでは弘前の、ひいては青森のりんごが姿を消してしまう…。それに歯止めをかけようと、冬場の閑散期にも取り組めるシードルづくりをはじめたのが「弘前シードル工房kimori」です。自然災害などでキズがついてしまったりんごを、無駄にせずおいしく提供できるように、という取り組みでもありました。

「弘前の人でも、弘前にりんごがあることが当たり前だと思っている。でも、いま残していこうとしないと、次の代ではりんご畑が半分になって、あっという間に弘前の風景は変わってしまいます」。弘前市でりんご農家を営む奈良卓馬さんも、『kimori』の想いに賛同するひとり。「青森からりんごがなくなってしまうのは寂しい。春にりんごの木の下で花見をしたり、道を歩けばりんごの薫りがしたり、そんないつもの風景を残していきたいんです」。

農家の若手たちが中心となってはじめた『kimori』は、青森のりんごのおいしさを伝えるだけでなく、畑を守り継いでいく取り組みも行なっています。後継者のない畑を教室がわりにお借りして、りんごの栽培経験のない人にその技術や知識を広く教えながら、りんご農家の育成もはじめているのだとか。りんごはもともと日本では育てにくく、いまおいしく収穫できるのは、青森で考案された技術があったから。津軽地方のりんご農家や専門家たちが中心となって考案した剪定方法や、品種や木の個性にあわせたメンテナンスの方法など、“シードルづくり”の枠を越えて、伝えられることは惜しみなく伝えているのだといいます。

咲く、実る、青森の象徴

青森のりんごづくりの歴史は
青森の人の努力の歴史。
深い雪にも負けないりんごは
青森の人の心と同じ。
だからこそ、やりがいがある。

豊かなりんごの実りを、
未来へ繋げていく「木守り」。

『kimori』の名前は、収穫に感謝を込めて木にひとつ残すりんごを「木守り」と呼ぶことにちなんでいます。弘前の人たちが築き上げたものを守り、受け継いでいける場所になれるように…公園の中に「弘前シードル工場kimori」が建てられたのも、その想いから。公園でりんごを楽しんで、ゆっくりおしゃべりをしたり、くつろいだり。「弘前シードル工場kimori」には、脚立を利用したハンモックや薪ストーブのあるスペースもあり、イベントの会場やギャラリーとしても使えるようになっています。りんご畑に人が集まって、その場所で乾杯があって、りんごのシードルが笑顔をつくっていく。「工場ではなくて、人と人とがりんごを通じて繋がっていける場所になれればいいなと思うんです」。弘前の風景は、こうしてまた、大切に受け継がれようとしています。

りんごのシードルを、
どこよりもおいしく味わえる場所。

「弘前シードル工房kimori」ではシードルの試飲もできるので、りんご畑を眺めながらスイートとドライの違いを楽しむのもおしゃれ。公園のショップにはノンアルコールジュースも販売していて、ドライバーの方も安心です。今回の訪問では『津軽びいどろ』のガラス食器「津軽自然色りんご」と、りんごの木でつくる木村木品製作所の「kimumoku×津軽びいどろ」を持参で伺いました。旬の赤りんごと青りんごをイメージした器に、シードルの黄色がやさしい彩りを添える姿は、まさに爽やかなりんごそのもの。しっとりとした質感とゆるくウェーブを描く木目が特徴的な木の器を添えれば、公園の自然と調和して心地いいテーブルになります。

弘前市りんご公園の高台からは、岩木山を背景に、りんご畑が広がる清々しい光景を望むことも。青森の人たちが大切に育んできた風景のなかで、りんごのおいしさを味わいながら、心地いいひとときが過ごせるとっておきの場所です。青森へお越しの際は、ぜひ足を運んでみてください。


ギャラリー

今回登場したステキな場所は...

  • 約80種、1,500本の林檎の木が植えられている公園。生産体験園では、人工授粉、実すぐり、もぎとりなどの作業体験のほか、園路を自由に散策することができます。りんごにこだわった商品が売られているショップも。
  • 美しい円錐形の火山。弘前のどこからでも雄大な姿を見ることができる。山頂からは、八甲田連峰や津軽半島の権現崎と十三湖、なだらかな弧を描く七里長浜、そして鯵ヶ沢から大戸瀬まで、青森の美しさが見渡せます。