【読みもの】百色の青森 津軽びいどろを訪ねて

  • 百色の青森 木村木品製作所
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青森をつくる もの ひと こと

『津軽びいどろ』の生まれた青森県の多彩な「いろ」と「ひと」と「もの」を訪ねて取材、土地の魅力を発信していくコンテンツです。今回は青森の名産品であるりんごの木を使用する『木村木品製作所』さんの工房へ伺い、モノづくりへの想いをお聞きしました。

青森をつくるひと

未来に残す「木のモノづくり」 未来に残す「木のモノづくり」

青森の代名詞・りんごの木でつくる
「木村木品製作所」の手仕事。

りんごのふるさと弘前で、4代続く木工屋「木村木品製作所」。青森ひばでつくる“りんご梯子”の開発からスタートした木村木品製作所は、時代の変化に応じて、建具や家具、店舗什器などさまざまな製品を手がけ続けてきました。現在では玩具遊具「わらはんど」や、りんごの木でつくるインテリア雑貨「CHITOSE」など、新しく自社ブランドも立ち上げています。

りんごと一緒に

弘前といえば「りんご」
りんごといえば「弘前」
弘前で生まれた町工場だから
りんごと一緒に育ってきた。

“りんご梯子”の開発からはじまった、
弘前の町工場。

木村木品製作所は、青森県弘前市の小さな駅「千年(ちとせ)」のすぐそばにある木工屋です。住宅地のすぐ向こうには弘前市の代名詞とも言えるりんご畑が点在する場所で、木村木品製作所はりんご農家の作業に欠かせない“りんご梯子”を開発し、長年つくり続けてきました。りんご梯子は、縦ではなく横へ枝が広がるように剪定する“弘前式“の剪定方法に合わせて、当時の木工職人たちが開発したものだといいます。

かつては弘前城の城下町だった弘前市が、りんごの産地となるまでの時代の変化に寄り添い、りんご農業とともに成長してきた木村木品製作所。そのため、その恩返しのような気持ちで、現在では青森のりんごの木を使用した製品をつくっているのだそうです。

役目を終えたりんごの木を、
手間をかけてでも木材へ。

青森県弘前市は、日本一のりんごの生産地です。市内には至る所にりんごの木が植えられて、市街地を少し離れると、見渡す限りのりんご畑が続いていきます。春になると爽やかに薫る可憐な花を咲かせ、秋になると実りをもたらしてくれるりんご。その木は毎年さまざまな理由で役目を終えて、薪とされる以外はほとんどが廃棄されてしまいます。とくに近年は、りんご農家の高齢化に伴って閉鎖される農園も多いため、伐採される樹木は少なくありません。その現状を身近で感じてきた木村木品製作所では、これまで弘前という土地を育んでくれたりんごの木を大切に、少しでも地域で活用できるようにと、りんごの木を使用した製品づくりをはじめたのだといいます。

とはいえ、りんごの木は節目や曲がった場所が多く、木材として使用するには不向きです。役目を終えた木のほとんどが処分されていたのは、太く長い木材が採りにくく加工しにくいからで、木材の問屋であっても、りんごの木材はほとんど取り扱っていません。そのため木村木品製作所では、職人自らが農園へ足を運び、処分予定の木の中から加工しやすそうな樹木を選んで伐採し、製材・乾燥といった下処理まで、すべて自分たちで行なっているのです。たくさんの手間をかけてでも、弘前の資源を活かす。その想いと姿勢は、簡単に真似のできるものではありません。

りんごに恩返し

伐った丸太を放っておくと
すぐダメになってしまうし
丸太の半分しか木材にならない。
それでも、りんごに感謝を込めて。

青森の資源を生かしつつ、
時代にあったモノづくりを。

りんごの木材は、コクのある風合いとハッキリとした木目が魅力です。「りんごの香りでもすれば良かったんだけど、手間がかかる割には普通の木なんだよ」と職人さんは笑いますが、その“手間”を惜しまないモノづくりの背景を知ると、製品の一つひとつ、揺らぐような木目の一つひとつが、さらに美しく見えるようです。

また、木村木品製作所はオーダーメイドの商品づくりをはじめ、高い技術力を生かした文化財修復、医療福祉製品開発、住居リノベーションなど、さまざまな分野へも挑戦しています。職人さんの層も幅広く、職人歴50年という熟練の方から女性作家まで、それぞれの得意分野を生かしたモノづくりを行なっているところが特長です。4代目の木村崇之さんはデザインへのこだわりも深く、りんごの木とひばを使用した「Ringoスツール」やアクセサリーなども展開する「CHITOSE」の開発を進めるなど、青森の資源と技術を、デザインを通じて広く発信する施策にも取り組まれてきました。技術力・発想力・デザイン力を兼ね備えたそのモノづくりは国内外で評価され、さまざまな賞を受賞しています。

丁寧な手仕事と光るアイディア。
未来へ残したいプロダクト。

木工職人が丁寧に削り出す曲線の美しさ。りんご木がもつ風合い。りんごの木を使用した木村木品製作所独自のプロダクトは、唯一無二の魅力で空間を彩ります。津軽びいどろ「津軽自然色 りんご」とのコラボレートアイテムも、そのひとつです。木製品とガラス製品は相性が良く、ハンドメイドガラスに宿る光の揺らぎは、木がもつあたたかな質感に美しく映えます。とくにりんごの木は、やわらかな質感をぐっと引き締める凛とした木目が“豊かさと厳しさを併せもつ津軽の景色”を思わせて、津軽のガラスと魅力を深めあい調和するように思います。樹皮をそのまま残した一輪挿しは、庭先で見かけるような素朴な草花を生けても素敵です。家の中にいても自然の気配やぬくもりが感じられる器は、ご自宅用としてはもちろん、新居祝いや新婚祝いの贈りものにもぴったりです。

青森という土地のチカラを生かして、未来へつなげていくモノづくり。あらゆる分野へと挑戦していく木村木品製作所から、今後どんなアイディアや製品が生まれていくのか…これからのご活躍がとても楽しみな工房でした。

今回の取材でお話をお聞きしたのは...

木村木品製作所

「フルオーダーのモノづくりを通じて人々の生活に夢と潤いを提供し、物・心両面の幸せを追求する」をテーマとした手仕事の木工屋。青森ひばを使用したりんご梯子の開発をはじめ、建具・家具・什器と時代に合わせて対応し続け、現在ではインテリアやアクセサリーに特化したオリジナルブランドも設立している。りんご木材を使用したプロダクトの開発など、青森の歴史と資材を生かした取り組みにも注力。職人世界の固定概念を覆し、小さい工場ながらも年齢や性別の枠を超えた幅広い人材で、木村木品製作所というチームがつくられている。

木村木品製作所 http://www.kimumoku.jp

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